つれづれ 心のつぶやき

空が落ちるという、杞の国の住人だ

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空が落ちてくるかもしれない、とまではいかなくても、それに近いものがある。

極度の心配性のAさん、先日、持病の薬をもらいに内科の病院へ行ったら…というお話。

巷で流行している病気のことが心配で心配で、ずーっと家に引きこもっていたAさん。病院へ行くこともなかなか決断できず、先延ばしに延ばしていたけれど、とうとう薬も底をつき、一大決心して行くことにしました。

病院には長い時間滞在したくないから、薬だけ処方してもらうつもりだったのに、上手に乗せられて内診もしてもらうことになってしまいました。

個人の病院は、この騒動で患者さんが少ないと聞きますし、内診を勧められたのは営業的な側面もあったのかもしれないな、と。これはあくまで推測。

当初予定してなかった内診。それに追い打ちをかけるように、会計を待つ間に、なんと!咳をする患者Bさんが登場!当然マスクはされているんですけど。

Bさん、受付で体温計を受け取り、体温を測り始めました。
通常時だとなんでもない、当たり前のことなんですけどね。

超過敏になっているから、咳をしていること、体温を測っていることが疑わしい、なにもかもが感染経路に見えてくる。

どうしよう、すれ違ってしまった!
同じ待合室の空間にいてしまった!
同じ空気を吸ってしまった!

冷静に見ると、Bさん、ただの風邪なんじゃないかと思うんですが、Aさんには、もうBさんが流行り病にかかっているとしか思えない。

 

そこから、Aさんの心配ごとの妄想は止まるところを知りません。

どんどん、どんどんエスカレート。

なんで病院に行ったんだろう。
なんで薬だけでいいって強く言わなかったんだろう。
なんで内診してもらったんだろう。
なんでBさんがやって来たんだろう。

どうしよう、病気になってしまったら。
どうしよう、他の人にうつしたら。
どうしよう、重症化したら。
どうしよう、死んでしまったら。

 

病は気からとはよく言うもので、Aさん、家に帰ってしばらくすると、とうとう熱が出てしまいました。

咳もなく、味覚、嗅覚異常もなく、37℃ちょっとくらいの微熱なんですけど。
顔が熱くて、火照ってたまらない、おまけに血圧がとても高い、と。

そして、わたし達のところへやってきました。

「あの流行り病にかかってしまった、どうしよう」

廊下によろよろと座り込み、オロオロと泣き出してしまいました。

例えて言うなら、今日が地球最期の日。明日には核戦争が始まる。もう、明るい未来は訪れることはない。

死刑宣告されたみたいな。

 

潜伏期間があるから、もし感染していてもすぐに症状はでないよ、といくら言っても

マスクもしてたし、家に帰ってから手も消毒して、洗ったし、大丈夫だよ、と言っても

咳する人とすれ違ったくらいでうつらないよ、マスクしてたんだから、と言っても

病院にいて咳をしていたBさんが流行り病だとは限らないよ、ただの風邪かもしれないよ、と言っても

まったく聞く耳持たず。

 

いやー困ったもんだ。
話す言葉が通じない。
同じ日本語を話す人同士の会話とは思えない。
日本語が共通言語ではなくなってしまった。

 

そして次の日もまた次の日もAさんの心配ごとはおさまらず。

外出自粛の期間でもあるし、家の中でどよーん。
おまけにその時天気も悪く、空もどよーん。

 

何を言っても伝わらないので、一つだけ。
テレビ見ない方がいいよ。とアドバイス。

「人間死ぬときは死ぬんだから、それで思い悩むの、エネルギーの無駄だよ!」とは言ったものの、熱が下がらず体調が思わしくなかったら、病院かあるいは保健所に連絡しなきゃ、だな。と心の準備だけは万全な状態で待機していました。

その後、どうなったかというと。
熱もその時だけで、咳もないし、数日後にはすっかり過去のことになって、病院の事件は記憶の彼方に…

 

 

そして今朝。今度はまた新たなる心配ごとが発覚。

それは、家庭菜園で育てているイチゴ。

真っ赤になって、ちょうど収穫時期なのがいくつかありました。

 

Aさん、いつも朝はそれほど早起きではないのに、めっちゃ早起きなんですよ。

どうした?と思っていたら、

「イチゴ、鳥に食べられないか心配で、おちおち寝てられない」と。

 

 

そりゃ、空も落ちてくるわな、と心の中で毒づいたのは内緒です。

 

Aさんというのは、姑。

 

同じ家に住んでいるのに、この家にも異次元空間はいくつも存在していて、お互いに異世界の住人なのでした。

 

わたしと話すと「明るくなるからいいわー」と言ってくれるのは素直にとても嬉しい。わたしの話す言葉はどうやら共通言語として存在するらしい。

けど、会話の後、わたしが少しどよーんとなるのはなんだろう…
耳に入る言葉がなかなか理解できない。
わずかな時間ですけど、ね。どよーんとなるの。
すぐ忘れちゃうから。

 

杞憂。「昔、杞の国の人が、天が落ちてくるのを憂えた」という中国の故事からの言葉。

彼女はきっと杞の国の人に違いない。

母の日、カーネーションじゃなくて、ご馳走でもなくて、この本プレゼントすればよかったかも。

 

それでも彼女は残り1割の心配をするんだろうな。

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